「106万円の壁」が令和8年10月に撤廃予定、パート・アルバイトの社会保険加入はこう変わる(freee人事労務で対象者を洗い出す)
社会保険加入の目安だった「月額賃金8.8万円(年収約106万円)」の賃金要件が、令和8(2026)年10月に撤廃される予定です。加入判定の変化・残る要件・会社負担の増え方と、freee人事労務での対象者の洗い出し手順を一次情報にもとづき整理します。
続きを読む →7月に算定基礎届を提出した後、賃上げや手当の新設をした法人の経営者・経理担当向けの記事です。月額変更届(随時改定)が必要になる3要件の判定方法と、freee人事労務で届出まで完結する手順を解説します。放置すると、誤った社会保険料のまま、次の定時決定が反映される翌年8月まで計算し続けることになります。
標準報酬月額(社会保険料の計算基礎となる区分額)の見直しには、2つの別ルートがあります。
1つ目が定時決定です。毎年7月に提出する算定基礎届で、4〜6月の報酬をもとに標準報酬月額を決め直し、その年の9月から翌年8月まで適用します。7月10日の三重の山場(算定基礎届・労働保険・源泉所得税)の記事で提出手順を解説したのは、こちらのルートです。
2つ目が**随時改定(月額変更届)**です。年の途中で固定的な給与が大きく変わったとき、定時決定を待たずに標準報酬月額を改定します。日本年金機構も、定時決定の算定月以後に報酬月額の大幅な変動(2等級以上)があった場合には月額変更届の提出が必要と明示しています(出典:日本年金機構「随時改定(月額変更届)」)。
つまり「算定基礎届はもう出したから、今年の社会保険手続きは終わり」ではありません。提出直後の7〜9月は、昇給や職務変更で固定給が変わる従業員が出やすい時期です。賃上げをしたら、随時改定の要否を必ず確認してください。
随時改定は、次の3つをすべて満たした場合に行います(出典:日本年金機構「随時改定(月額変更届)」)。
起点となる「固定的賃金の変動」には、次のようなケースが該当します。
見落としやすいのは、基本給が変わらなくても手当1つの新設で起点になる点です。一方、残業代など非固定的賃金だけが増減しても随時改定の対象にはなりません。また、固定的賃金は上がったのに残業代の減少で3か月平均が下がった場合のように、固定的賃金の変動方向と平均額の増減方向が食い違うケースも対象外です。
なお、2等級以上の差が原則ですが、標準報酬月額の上限・下限にかかる等級変更では、報酬月額が日本年金機構の定める特定の範囲に該当する場合に限り、1等級差でも対象になる特例があります。
改定のタイミングは、変更後の報酬を初めて受けた月から起算して4か月目です。数値例で確認します。
例:基本給30万円の従業員を、8月支給分から33万円に賃上げした場合(残業代等はないものとします)
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 従前の標準報酬月額 | 30万円(厚生年金19等級) |
| 変動月以後3か月(8・9・10月)の平均報酬月額 | 33万円 |
| 平均額による標準報酬月額 | 34万円(厚生年金21等級:報酬月額33万円以上35万円未満) |
| 等級差 | 2等級 → 随時改定に該当 |
| 改定時期 | 11月(変動月8月から4か月目) |
厚生年金保険料率は18.3%(労使折半で各9.15%)なので、本人負担は月27,450円から31,110円へ、月3,660円の増加です。会社負担も同額増えます(出典:日本年金機構「厚生年金保険料額表(令和8年度版)」)。これに加えて、健康保険料(都道府県別の料率)も同じ標準報酬月額で計算されるため、実際の負担増はさらに大きくなります。
賃上げや賞与が会社負担分を含めて実質いくらのコストになるかは、夏賞与の社会保険料コストを逆算する記事で解説した考え方がそのまま使えます。
7月以降に随時改定で決まった標準報酬月額は、翌年の定時決定(9月適用開始)までの間、つまり翌年8月まで適用されます。11月改定なら、誤りを放置すると最長で翌年8月まで誤った保険料を天引き・納付し続けることになります。
算定基礎届の提出とタイミングが重なる場合の優先関係は、明確に決まっています。実務では月額変更届による随時改定を「月変」と略しますが、7月・8月・9月の随時改定に該当する場合は、随時改定により決定された標準報酬月額が優先されます(出典:日本年金機構FAQ「算定基礎届と月額変更届ではどちらが優先されますか」)。
7月改定の該当者は、月額変更届の提出により算定基礎届の記入対象外となります。また、8月または9月に随時改定が予定されている従業員は、事業主から申し出ることで、7月時点での算定基礎届の届出を省略できます。「算定基礎届を出したのに、直後に月額変更届も出すのは二度手間では」と感じるかもしれませんが、制度上は月変ルートが優先される設計なので、該当したら速やかに月額変更届を提出してください。提出先は事務センターまたは管轄の年金事務所で、電子申請にも対応しています。
freee人事労務は給与計算データと社会保険手続きがつながっているため、随時改定の判定から月額変更届の提出までを一気通貫で処理できます。以下は2026年5月時点の仕様を前提とした流れで、画面構成は変更される可能性があります(出典:freee公式ヘルプ「社会保険料の随時改定を行う(月額変更届)」、「随時改定」の進め方)。
なお、仕様やプランにより利用できる機能が異なる場合があるため、最新の対応状況はfreee公式ヘルプでご確認ください。
給与仕訳をfreee会計に連携している場合は、法定福利費の会社負担分が増える点も月次の数字で押さえておきましょう。改定を忘れると、給与計算・納付額・freee会計の法定福利費がすべて誤ったまま流れ続けます。
なお、社会保険の適用拡大により、いわゆる「106万円の壁」の賃金要件は令和8(2026)年10月に撤廃される予定です(正式には今後政令で定められます)。影響を受けるのは特定適用事業所(従業員51人以上等。企業規模要件は段階的に縮小予定)の短時間労働者に限られるため、それ以外の会社で直ちに対象者が増えるわけではありませんが、該当する会社(任意特定適用事業所の申出をした会社を含む)では、支払基礎日数11日以上で判定する月変管理の対象者が増えていきます。詳細は2026年10月の適用拡大の記事で解説しています。
最後に、実務で判定を誤りやすいポイントを整理します。
事務所の視点では、後日、月額変更届の提出漏れが判明すると、遡って保険料差額の精算(会社の追納と従業員との過不足精算)が必要になることがあり、手間は届出1枚の比ではありません。賃上げの意思決定をしたら、その場で「月変になるか」を確認する習慣をおすすめします。
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社会保険加入の目安だった「月額賃金8.8万円(年収約106万円)」の賃金要件が、令和8(2026)年10月に撤廃される予定です。加入判定の変化・残る要件・会社負担の増え方と、freee人事労務での対象者の洗い出し手順を一次情報にもとづき整理します。
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